2014年に世界遺産となった「富岡製糸場」がニュースになってから初めて富岡の歴史的背景を知ることになったんですが、そこで注目したいのが「富岡シルク」というシルクブランドです。
現在では、国内に流通しているシルクの99%以上が外国産のシルク。外国産の繭や生糸を使っても、国内で製作されたものは日本製や国産と表記することができるので、日本の伝統と文化を受け継いでいる純正のシルクは1%以下ということになります。
実際にシルク工場にお邪魔し、いろいろお話を聞いてきましたのでレポートしたいと思います!
取材協力:丸三綿業&眠り製作所
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シルクの新しい形
シルクは4大天然繊維(絹、麻、木綿、羊毛)の一つで、蚕の繭から取り出した天然繊維。4,700年以上前の中国の遺跡から絹織物が発見されるほど、昔から使われていた繊維のようです。
シルクという素材の認知率はほぼ100%でしょう。しかし、シルクを使った商品は見たことはあるけど、素材自体をちゃんと見たことがない人の方が多いのではないでしょうか?
通常「真綿(シルクの綿)」を使っている商品は、蚕の繭をそのまま広げ綿状に加工していますが、シルクの可能性を広げるために丸三綿業では特殊な技術を使い「シルクフィル」という形にしていきます。
シルクフィルの場合は、いくつかの繭から糸を引き、切ることなく束ね1つの形に編んでいきます。結果、繭を引き延ばした真綿よりもふわっとした仕上がりになり、保温効果、体へのフィット感、軽さが圧倒的に向上されるのです。
また、枕や布団などで使用する際に、1本の糸から1つの形になっているシルクフィルの方がへたれにくく、繭特有のにおいもないというのが魅力です!
わかりやすいように、写真を見てみましょう。
どちらも、もちろん高級素材のシルクです。でも加工の仕方で見た目から変わるんですよ。これを見ればわかる通り、枕や布団に真綿が入っているよりもシルクフィルが入っていたほうが、偏ったりへたったりしなそうですよね。
繭の糸を切断することなく束ねているからこそ伸縮性もある。そして、真綿は表面の成分が落ちてしまうので洗濯することができませんが、シルクフィルは洗濯が可能な商品を作ることも可能にしたそうです。
ちなみに、シルクフィルは1,500mくらいの1本の糸を束ね、1つの形にしているものもあるんだとか。
繭の糸ってこんなに細いんですが、それを束ねる技術を開発し、シルクフィルとして生まれ変わったんです。
丸三綿業は愛子様のご誕生時に新生児用ベッドパット、ゆりかご用パットを献上されているそうです。それくらい信頼のあるシルクを手掛けている、と考えてよいですよね・・・!
私も実際に工場で触ってみたのですが、その軽さ、保温性など一瞬で実感できたので本当に驚きました。もちろん手触りも最高に気持ちがいいんです。「衣をまともうとは、このことか・・・!」とスッとでてきましたよ。
職人たちが働く工場へ
通常は工場見学を行っていないのですが、今回は特別に丸三綿業の工場の中を見学させてもらいました。
シルクは昔から肌にいいとされていることは知っていましたが、原料から扱うこの工場ではその比ではありません。男女問わず、手がつるつるなんです。これは、工場で働く特権ですね!冗談ではなく、本当に肌がきれいになるそうですよ。
まずは、繭から糸を高速で紡いでいきます。紡ぐ様子は当日見ることができませんでしたが、富岡製糸場では上の写真のような機械を使って紡いでいたそうです。
その後、丸三綿業の工場で精錬してシルクフィルへと加工していきます。正直、すでにこの段階で「もう十分じゃない?」ってくらいいい感じなんですよ。シルクという素材のクオリティの高さを思い知らされました。
その後、製品として使うために職人たちの作業が続きます。職人の感覚っていうのは、本当に機械じゃマネできないんですよねぇ。まさに、人の洗練された技という感じです。
伸ばす工程が終わったら、棒に巻き付けていきます。この状態でもふわふわ感が伝わると思います・・・!今回は、このシルクフィルを使った掛布団を作る工程を見させていただきました。
下の写真は、眠り製作所で販売している「シルクフィル掛布団(ハーフ)」を作っている様子です。ひとつひとつが手作業。シルクフィルを綺麗に敷いていきます。
掛布団の中に入れる作業も人の手で行っていきます。
これで、シルクフィルを使った軽くて保温性の非常に高い掛布団の完成です。
まとめ
シルクという素材は、昔からありながらも「扱いにくさ」「価格」などによって、あまり触れることができなかった素材だったので、今回の見学はかなり貴重な体験となりました。
また「素材に触れることの大切さ」というのは、ものすごく重要。製品になってしまってからじゃ体験できない部分だからこそ、何とか表現したい。テキストでは伝わらない触った時の衝撃と言ったら・・・。
暖かさを感じるのに重さはない。
この感覚を体験できる機会を是非作ってほしいですね。
Special thanks
丸三綿業&眠り製作所
本記事は、2014年時の取材記事をリライトしたものです。今回の旅は、株式会社プレジールさんが主催する「シルクの旅」に参加しており、旅費の一部をご負担いただいております!