酒の「旨さ」と「飲み姿」を追求した大堀相馬焼 陶吉郎窯の酒器「iki(粋)」を初体験(PR)

「今の世の中には、焼き物は出尽くしている。だからこそ、作り手がこだわった1品を提供していくのも良いのではないだろうか。」

そう話す大堀相馬焼 陶吉郎窯の近藤学さん。

その作品の1つが、酒の「旨さ」と酒を飲む所作の「粋な姿」を追求した酒器「iki(粋)」です。

酒の旨さに集中してもらうために行き着いたというシンプルなデザインと、所作のかっこよさを引き出す平な盃。ご自身が酒器を使っていく中で、自分自身が納得がいく形を追い続けて辿り着いた1つの答えなんだとか。

自分のこだわりを形にし、その想いに共感してくれる方に届けば嬉しいです。」とも話してくれた近藤さんでした。

どっぷり匠の世界を体験してきたので、その様子をご紹介したいと思います!

Special Thanks!!

This review is sponsored by いわき地区商工会広域連携協議会

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福島県で300年以上続く大堀相馬焼の窯元「陶吉郎窯」

2018年に、大堀を離れいわき市へ。

「大堀相馬焼」はその名の通り福島県・大堀地域の伝統工芸で、陶吉郎窯のような窯元がいくつもあったそうです。しかし、東日本大震災による原発事故のため避難を余儀なくされました。

結果、活動を継続できなくなった窯元も出ているんだとか。

陶吉郎窯も伝統産地である大堀に戻ることができず、2018年に拠点をいわき市へ移し活動を続けています。

伝統産業が現地を変えるという部分に、寂しさと大変さを非常に感じている。」と話す近藤さん。

しかし、原発事故の兼ね合いもあり伝統工芸である「大堀相馬焼」がメディアに取り上げられることも多くなったそうです。

そういう意味では、広くたくさんの方に知ってもらう機会と捉え、興味を持ってくれ方々にその期待を裏切らない「モノ」を作り続ける必要があると強く想っているとのこと。

大堀相馬焼も時代とともに変化してきたが、今のままでは令和を乗り切れないだろう。だからこそ”令和の大堀相馬焼”を展開していかないといけない。(近藤さん)

今後も進化し続ける大堀相馬焼に注目したいですね。

そんな近藤さんは、工芸技術の1つ「象嵌(ぞうがん)」を使った作品で数々の受賞歴を持ちます。

その繊細な仕事に、目を奪われました。

「象嵌(ぞうがん)」で作り上げた作品の1つ。
掘った部分に、別の色の陶土を埋め画や模様を表現していきます。

「象嵌」とは、掘った部分に素地色とは異なる様々な色の陶土を埋め柄を表現する技法です。

断面を見えるとその様子がわかりますね。

象嵌の基本は変えず、その上で新しい「色合い」や「組み合わせ」を作品に。

近藤さんはこの「象嵌」という工芸技法を基本とし、色々な表現を模索しているとのこと。上の写真は、象嵌で絵の具を混ぜたかのような模様を再現しています。

陶土を埋めた後に、串とかでなぞってるのかな・・・?削って埋めるだけでは表現できない箇所もあり、非常に興味深いですね。

料理の提供時に、フォークや串を使ってお皿にソースで模様を書くことがるのですが、そんなイメージかなぁ。通じるかわかりませんが、確実に他の作品とは違いましたね!

まさに、基本がある上での応用。

「デザインには、必ず作者の意図がある」というのが私の考えなので、作者の意図を聞きながら、考えながら作品を見学するのが本当に楽しい・・・!

「酒」と「飲む姿」にフォーカスした酒器「iki」

色々な作品がある中で、今回詳しくお話を聞いてきたのが冒頭にご紹介した酒器「iki」です。

実は、この盃は30年前から作っているものになるんですが、陶芸家であり酒好きな近藤さんご自身が使っていく中で形を変えていったこだわりの盃なんです。

お酒の香り・味に集中してもらうために、視覚的なデザインを無くし白一色に。
空気と接する面が広いので、日本酒がふわっと香ります。

「使いやすさよりも”酒の旨さ”を追求した!」というこだわりの盃。

見た目のデザインにとらわれず、あえて「美味しそう!」という先入観を持たせずにお酒の旨さだけを楽しんでもらうための酒器として作り上げたそうです。

最大の特徴は、その薄さ。

手で持った時、口に触れた時に感じるその薄さは初体験!お酒と唇がダイレクトに触れているかのような飲み口に驚きました。

「それはまるで口づけのような盃」

これは、公式ページのキャッチコピーです。

洒落たことを・・・!と、思いましたがまさにそれ。

陶磁器などを素焼きする際に、表面に光沢を出し液体がしみ込むのを防ぐのに用いるガラス質の粉末「釉薬(ゆうやく・うわぐすり)」を使用しているので厚みがあるそうなんですが、それでこの薄さなのか・・・。

これこそ、機械では作れない人の手仕事のなせる技なんだそうです!

他のものに比べ、圧倒的に薄い!

そして、薄皿の盃にこだわったのにも2つ理由があります。

1つ目は、酒の旨さを追求する中で「口に当たった時の面積(お酒が口に入る量など)」が関与していると考えたから。

2つ目は、薄皿は顔や手を大きく傾けることなく最小限の動きでお酒を飲むことができるので、所作が非常に綺麗で格好良くお酒を飲むことができるから。

薄い口作りなので欠けやすく、平盃の形状のためこぼれやすく安定しづらい上に繊細。しかし、だからこそ程よい緊張感が美しい所作に繋がるという考えがあるとのこと。

決して、万能で扱いやすい酒器ではありませんが、冒頭にも書いた通り「自分のこだわりを形にし、その想いに共感してくれる方に届けば嬉しいです。」ということなんですよ。

いい酒を、いい盃で、カッコよく飲もう。

そんな大人に、憧れますね・・・!

計算し尽くされた匠の窯仕事

階段状になっている形状が特徴的な登り窯

最後に、陶吉郎窯のこだわりでもある「登り窯」を見学させてもらいました。

大堀相馬焼は1690年の創業以来、一気に高温になる赤松を燃料とした「登り窯」を使って焼かれていました。しかし、昭和の時代に近代的なガス窯・灯油窯・電気窯が導入され一度姿を消したそうです。

陶吉郎窯では、途絶えた登り窯を昭和63年に復元!

薪を原料にしているので、炊いている途中に灰が舞い焼き物に付着し独特なデザイン(模様)を生み出します。

これは、近代的な窯(ガスや電気窯)では出せないものであり、職人の腕の見せ所。

「思いがけず良いものができた!」ではダメで、経験と計算により緻密な設計があった上で安定した商品を作れるのがプロの証拠だと話す近藤さんでした!

これが本当にすごくて、改めてそのお話を聞きたいくらいなんですよ。

焼き物って奥が深い!

ちなみに、陶吉郎窯ではもちろん近代的な窯も使用しています。窯の特性を生かしたモノづくりをしっかりと展開中です。

令和の時代を乗り超える伝統工芸の今後に注目です!

まとめ

近藤さんのご配慮で、福島の「蕎麦の匠」が打った蕎麦を「大堀相馬焼 陶吉郎窯 水切り皿」いただきながら、そのお皿を作った匠の話を聞くという、なんとも贅沢な時間を過ごさせていただきました。

(料理は奥様が準備してくれたそうで、本当に感謝です。美味しくいただきました・・・!)

手作りの焼き物特有の色や形、手触り、質感に重さ。

陶吉郎窯の器や皿を肌で感じられる体験だけでも貴重でしたが、まさか「料理と器」というところまで体験させてもらえるとは・・・!

料理と器は切っても切れない関係で、器の存在感が料理を引き立たせることもありますし、ikiのように見た目の存在感をあえて消すことで料理を生かすこともあります。

本当に、面白く興味深い世界です。

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